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レポート「日本の政策決定プロセス」公表

 

エネルギー基本計画を事例に、その公正性や議論の透明性を検証

Climate Integrateは、レポート「日本の政策決定プロセス:エネルギー基本計画の事例の検証」を公表しました。本レポートでは、気候・エネルギー政策の中核をなす「エネルギー基本計画」を事例に、日本における政策決定プロセスを検証し、審議構造が複雑であること、細分化された下位の会議体の検討が吸い上げられていく構図であること、委員構成がバランスを欠いていることなどの実態を明らかにしています。

パリ協定などの国際合意に基づいて、日本においても気候・エネルギー政策を強化する必要性が高まっています。特に2024年度は、エネルギー基本計画の改定や、2030年以降の温室効果ガス排出削減目標を含む「国が決定する貢献(NDC)」の策定が予定されており、今後に大きな影響を与える一年となります。その政策決定プロセスは、公正かつ透明に進められることが重要です。

本レポートでは、エネルギー基本計画を事例に政策決定プロセスに着目し、審議の実態を検証しています。主に、2020年10月–2021年10 月まで実施された第6次エネルギー基本計画の策定プロセスを取り上げ、その審議構造や経緯、各種会議体の委員構成を分析しました。

その結果、

  • 総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会においてとりまとめられるエネルギー基本計画の案は、総合資源エネルギー調査会の内外に設置される多数の会議体で先立って議論・調整が行われており、基本政策分科会で総合的観点から審議される機会は乏しい
  • 検証対象の15会議体の委員構成は、エネルギー多消費産業関係の企業が多い一方、エネルギー転換に積極的に取り組むエネルギー需要側の企業や非営利団体からの参加は少ない
  • 50–70歳代の男性が中心であり、若い世代や女性は少ない
  • 化石燃料を中心にした既存システムからの脱却に慎重なスタンスの委員が多数を占めている

ことなどがわかりました。

レポートでは、気候・エネルギー政策の審議において、議論の専門性を確保しつつも、業種・年齢・性別・意見の多様性に配慮し、特定の人・組織に偏らない人選を行い、より民主的な政策決定プロセスを追求していくべきであると問題提起しています。

執筆者コメント
公共政策ディレクター 安井裕之
「本レポートでは、エネルギー基本計画をめぐる複雑な審議構造や検討プロセスを紐解くとともに、各種会議体が公正かつ均衡の取れた委員構成となっているかを検証しました。政策の中身だけではなく、政策決定プロセスにも注目が集まり、今後の気候・エネルギー政策の決定プロセスのあり方について見直しが図られていくことを期待しています。」