シンポジウム 「2035年日本の電力脱炭素化に向けた戦略」(23年3月1日)

来たる3月1日、米国エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所 (バークレー研究所)が、2035年に向けた日本の電力システムの脱炭素化に関するレポートを発表いたします。本レポートは、日本が再生可能エネルギーの割合を大きく増やすことで2035年までに脱炭素電力に舵を切ることが可能であることを示すものとなります。当研究チームは、これまでに米国(2020年)、インド(2021年)、中国(2022年)における電力システムの脱炭素化に関する研究結果を発表しています。
2035年の電力部門の脱炭素化は、ネットゼロ実現において重要なマイルストーンであり、昨年のG7サミットでも合意されました。日本が再生可能エネルギーの利用を拡大することは、電力コスト削減、エネルギー安全保障の強化、温室効果ガス排出削減の面から有益です。本レポートでは最新のモデルによる解析を行い、経済的な電力部門の再エネシフトの実現可能性を検討しています。
本レポートの発表に際し、シンポジウムを開催いたします。シンポジウムでは、バークレー研究所による解説、専門家による日本への示唆について意見交換を行います。また、Climate Integrateより、再エネシフトの実現に必要な政策提言のレポートについて発表いたします。
シンポジウムの冒頭には、米国国務省気候変動副特使のリチャード・デューク氏にご挨拶をいただく予定です。

日程・参加方法

日時:2023年3月1日(水) 10:00-12:15(日本時間)
共催:米国ローレンス・バークレー国立研究所 一般社団法人 Climate Integrate
開催方式: Zoom オンライン(一部招待者のみ会場)
言語:日本語・英語 同時通訳付き 
参加登録:参加費無料 要事前登録 先着1000名

※オリジナル音声
※日本語音声

プログラム概要

冒頭挨拶
リチャード ・デューク(Richard Duke) (米国国務省気候変動副特使)オンライン

1. 2035年日本レポート発表

  • 2035年日本レポートの説明
    白石 賢司 (バークレー研究所研究員 Climate Integrate理事) 資料 ▷ JP, EN

  • 2035年における米国・中国の電力システムについての解説
    米国:アモール・ファドケ(Amol Phadke)(バークレー研究所研究員) 資料▷JPEN
    中国:ジャン・リン(Jiang Lin)(バークレー研究所研究員) 資料▷JPEN

  • 共同執筆者コメント
    諸富 徹 京都大学 大学院経済学研究科 教授 資料▷JPEN


2. コメント

  • 高村 ゆかり 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 資料▷JPEN


3. シナリオ実現のための政策提言 

  • 平田 仁子 Climate Integrate 代表理事 資料▷JPEN


4. Q&A・ディスカッション

米国ローレンス・バークレー国立研究所について (The Lawrence Berkeley National Laboratory)
ローレンス・バークレー国立研究所は1931年に創立され、これまでに16のノーベル賞を受賞している。本研究所は、持続可能なエネルギーや環境問題の解決策の開発、有用な新素材の開発、計算機分野のフロンティアの開拓、生命、物質、宇宙の謎に関する研究に取り組んできた。また、世界中の科学者が本研究所の施設を利用し、科学的発見を行っている。

Climate Integrate 
気候を守るための政策転換と行動の加速をめざす東京に拠点を置く独立系シンクタンク。2022年1月創立。

登壇者

リチャード・デューク(Richard Duke)氏 
米国国務省 気候変動副特使

主要経済国によるパリ協定の下での野心的な排出削減目標の策定と実行に取り組み、エネルギーの世界的な脱炭素化や、メタン排出の迅速な削減戦略も推進。前職ではコンサルタントとして勤務したほか、ブルッキングス研究所シニアフェローを務めた。また、オバマ前大統領の特別補佐官として、パリ協定の2025年排出削減目標などを定めた「気候変動計画」の策定と実施に関わり、モントリオール議定書のHFCsに関するキガリ改正の省庁間交渉を主導。今世紀半ばに向けた米国の脱炭素戦略も執筆している。それ以前は、米国エネルギー省で副次官補を務め、自然資源防衛協議会(NRDC)とマッキンゼーにて勤務。プリンストン大学でPh.D.を取得。

白石賢司
米国ローレンス・バークレー国立研究所

東京大学にて工学学士及び工学修士を取得後、環境省に入省し、国内外の地球温暖化対策や廃棄物・リサイクル政策等に従事。同省課長補佐、公益財団法人地球環境センター事業部長、カリフォルニア大学バークレー校公共政策学大学院を経て、現在はカリフォルニア大学バークレー校再生可能・適正エネルギー研究所及び国立ローレンス・バークレー研究所にて日本を含むアジアの再生可能エネルギー政策の研究を行っている。

アモル・ファドケ(Amol Phadke) 
米国ローレンス・バークレー国立研究所

ローレンス・バークレー国立研究所電力市場・政策部スタッフサイエンティスト。カリフォルニア大学バークレー校ゴールドマン公共政策大学院シニアサイエンティスト。系統用蓄電池、大型電気自動車、インドの電力セクターにおける再エネの普及、新興国における家電・機器の効率化などを研究。これまでに80以上のジャーナル記事、研究報告書、会議論文を発表し、Times of India、Economic Times、The Hindu、Nature Magazine、Indiaなど、数多くの出版物で紹介。インド政府、電力会社、規制当局に、定期的にエネルギー政策などに関する助言を行う。インド・プネーにあるGovernment College of Engineeringで工学学士号を、カリフォルニア大学バークレー校のエネルギー・資源グループで修士号と博士号を取得。

ジャン・リン(Jiang Lin) 
米国ローレンス・バークレー国立研究所

ローレンス・バークレー国立研究所の中国エネルギー政策におけるNat Simons Chair、電力市場・政策部門のスタッフサイエンティスト、カリフォルニア大学バークレー校農業資源経済学部の非常勤教授を務める。中国におけるエネルギー・気候政策、非CO2温室効果ガス(メタンなど)を中心としたエネルギー・排出経路、電力市場・計画、低炭素経済移行、家電効率化問題などを中心に研究。2016年から2020年まで、バークレー研究所、カリフォルニア大学バークレー校、中国の清華大学の共同イニシアチブである「エネルギーと気候変動に関するバークレー・清華共同研究センター」の共同ディレクターを務めた。そのほか、エネルギー財団の中国持続可能エネルギープログラムのディレクター(2007~2016年)、戦略・分析担当のシニア・ヴァイス・プレジデント(2014~2016年)を務めた。1994年から2007年まで、バークレー研究所で家電製品規格と中国のエネルギーに関する研究を行った。 カリフォルニア大学バークレー校で人口学の博士号を、中国の西安交通大学で人口学の修士号を、サイバネティクス工学部で理学士号を取得。

諸富 徹
京都大学

諸富 徹(京都大学大学院経済学研究科教授) 1998年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、2010年3月より現職。専門は環境経済学。環境税を出発点にカーボンプライシングの研究を手がけてきた。福島第1原発事故に衝撃を受けて、2011年からは再生可能エネルギーと電力市場に関する研究を推進。京都大学大学院経済学研究科「再生可能エネルギー経済学講座」代表も務める。最近は、脱炭素化を資本主義の根源的な変化の中に位置づけ、新しい経済のあり方を模索している(諸富徹『資本主義の新しい形』岩波書店、2020年)。主要著作に『環境税の理論と実際』(有斐閣、2000年)、『環境』(岩波書店、2003年)、『低炭素経済への途』(岩波新書、2010年)、『入門 再生可能エネルギーと電力システム』編著、(日本評論社、2019年)など。

高村ゆかり
東京大学 

東京大学未来ビジョン研究センター教授。専門は国際法学・環境法学。京都大学法学部卒業。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。龍谷大学教授、名古屋大学大学院教授、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)教授などを経て、2019年4月より東京大学未来ビジョン研究センター教授。日本学術会議会員、2020年10月より日本学術会議第25期副会長(国際担当)。ロンドン大学客員研究員(2000〜2001年)。
中央環境審議会会長、東京都環境審議会会長、再生可能エネルギー買取制度調達価格等算定委員会委員長、アジア開発銀行の気候変動と持続可能な発展に関する諮問グループ委員、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)評議員なども務める。『Sustainability Science』誌、『Climate Policy』誌の編集委員。
主な編著書に、『環境規制の現代的展開』(大久保規子ほかとの共編著)、『気候変動政策のダイナミズム』(新澤秀則との共編著)、『気候変動と国際協調』(亀山康子との共編著)など。2018 年度環境保全功労者環境大臣賞受賞。

平田仁子
Climate Integrate代表理事 

アメリカの環境団体の経験を経て、1998年から2021年までNPO法人気候ネットワークで国際交渉や気候変動・エネルギー政策に関する研究・分析・提言などを行う。 気候変動枠組条約締約国会議には、1997年のCOP3から参加。石炭火力発電所の建設計画に対して取り組みや金融機関に対する株主提案などが評価され、2021年ゴールドマン環境賞を受賞(日本人3人目、女性初)。2022年には英BBCが選ぶ「100人の女性」に選出。2022年にClimate Integrateを設立。主な著書『気候変動と政治 -気候政策統合の到達点と課題』成文堂(2021)。『原発も温暖化もない未来を創る』編著、コモンズ(2012)。千葉商科大学大学院客員准教授。聖心女子大学卒業、早稲田大学社会科学研究科博士課程修了(社会科学博士)。